今宵、貴女の指にキスをする。
「京都での夜、私はイライラしていました。貴女が窮地に陥っているんじゃないかと気が気じゃなくて電話してみれば、やっぱり恐れていたことになっていた」
「はい」
「それなのに、貴女は私に弱みを見せない。助けて、そう縋ってほしかったんです」
「相宮さん?」
困ったように視線を泳がせたあと、相宮は深く深く息を吐き出した。
「京都タワーで堂上さんと一緒にいる姿を見て、私は嫉妬でどうにかなりそうでした」
「え……?」
まさか、と円香の口が動くと、相宮は苦笑する。
「本当ですよ。もっと言えば……以前堂上さんがこのマンションに来たとき、貴女に冷たい言葉を投げつけたのも嫉妬からでした。いい大人がするものじゃありませんよね」
申し訳ない、と頭を再び下げる相宮に、円香は慌てた。