今宵、貴女の指にキスをする。

「えっと、その……嫉妬って?」
「ですから、堂上さんに対しての嫉妬です。木佐先生が堂上さんに取られるかも、という不安からくる感情ですかね。なんと言っても昔からのよしみといった感じで、二人はとても仲がよく見えた」
「それは、一度堂上さんには担当になってもらっていますし……それにしても、取られるって」

 苦笑する円香に、相宮はむきになって言う。

「私はずっと木佐先生にアプローチしてきたんですよ? それなのに、貴女はなかなか素顔を見せてくれない」

 私をそんなに焦らしてどうしたいんですか? といきなり疑問を投げつけてきた。

 円香は何が何だか分からず、ただただ目を見開いている。
 そんな円香の指を、いつものように相宮はゆっくりと優しく触れた。

「ねぇ、考えてもみてください。キレイな指が好きだから、それだけの理由で女性の指を触ると思いますか?」
「えっと、えっと……」

 頬を真っ赤にして挙動不審の円香に、相宮は色気たっぷりにほほ笑む。
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