今宵、貴女の指にキスをする。

「でも今なら、貴女の本心を教えてくれますか?」

 声で愛されている気持ちになる。
 それほど魅惑的な声色で、円香は相宮に思わず縋り付いた。

 嬉しさと驚き。今の円香にとってどちらが勝っているだろう。
 そう考えたとき、円香の心はどちらも負けていると思った。

 もっと大きくて大切な気持ち、そちらに軍配は上がる。
 ずっと押し込めていた感情が今、相宮の言葉に反応した。

「好きです。私、貴方のことが好きなんです」

 円香は思いの丈をぶつけたが、今度は相宮が息を呑む番だ。
 一瞬硬直した身体だったが、相宮は円香をギュッと抱きしめて耳元で囁く。
 
「嫉妬で狂いそうになっている私を助けてはくれませんか?」
「え?」

 どういう意味だろう。円香は戸惑いながら相宮の腕の中から見上げる。
 すると、相宮は円香を真剣な眼差しで見下ろした。

「今宵、貴女の指に……そして、貴女のすべてにキスをしてもいいですか?」 

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