今宵、貴女の指にキスをする。

 円香の顔を覗き込むように、相宮はグッと距離を詰めてきた。
 まっすぐに円香を見つめる相宮の瞳は、いつもの穏やかさとはかけ離れたものだ。

 熱を帯びた感情を抱いた瞳。円香の胸はドクンと一際大きく高鳴った。

「だから、私は貴女が呆れるまで言い続けます。そう、決めました」
「決めたって」

 円香が戸惑っている様子を見ても、表情を和らげることはない。
 真剣な面持ちで相宮は何度も言う。

「円香が好きだ」

 いつもは"木佐先生”と呼ぶ相宮が、名前で呼んだ。
 先生付けは止めてくれ、とお願いしているのにもかかわらず、毎回"先生付け”で呼んでいた相宮。
 そんな彼が、セクシーな低い声で円香の名前を呼ぶ。

 それだけで涙が出るほど嬉しかった。
 涙を滲ませた円香を見て、目を見開いた相宮。そして、彼は嬉しそうに目尻を下げる。
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