今宵、貴女の指にキスをする。

「やっと心を開いてくれましたね」
「え?」
「円香はなかなか感情を表に出さない。それは意図的じゃないとしても、私はいつもやきもきしていました」
「相宮さん?」
「もっと私に感情を見せてほしい。嬉しいときや楽しいとき。どんなことを考えているのかすべて話してほしい。貴女の指に触れながらそう願っていました」

 柔らかくほほ笑む相宮に、円香は少しだけ意地悪なことを言う。

「相宮さんは、私の指に好意を抱いていただけではなかったのですか? 私はずっとそう思っていました」

 だからこそ、相宮が自分に好意を向けてくれているなんて気が付かなかった。
 そう円香が言うと、相宮はヤレヤレと肩を竦めて首を横に振る。

「それは私が指フェチだと言いたいのですか?」
「違うんですか?」

 きっと他の女性の手にも触れているはずだ。想像しただけで、嫉妬してしまう。
 円香は面白くないと正直に伝えると、相宮は格好を崩した。
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