今宵、貴女の指にキスをする。

「円香、ヤキモチですか?」
「ヤキモチです」
「おや? いつになく正直ですね?」

 おどけた様子で言う相宮に、円香は顔を歪める。

「だって、私の感情が読めないって相宮さん言ったじゃないですか」
「ええ。円香の感情は読みにくいですね。負の感情だけは素直ですが」
「そうおっしゃるので、素直になってみました。もう、すれ違いたくないですから」

 相宮に対しては正直に言う、と宣言する円香に、相宮は口元を綻ばせる。

「良い心がけですね。嬉しいですよ、円香」
「……相宮さん、話はぐらかしていません?」
「はて? 何のことでしょう?」

 明らかに確信犯だ。円香が不機嫌なことを隠すことなく相宮を見つめる。
 すると、相宮は円香の耳元に唇を寄せた。
 そして、熱っぽい吐息とともに言う。
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