今宵、貴女の指にキスをする。

「貴女の指にしか興味はありません」
「っ!」
「私がキスしたいと思う指は……この指だけですよ」
「あ、あの!」
「貴女より年上だから、余裕があるところを見せたかったのですが……無理そうですね」
「いや、えっと……その」

 いつもの相宮とは違う妖しげな雰囲気に呑まれ、円香は慌てふためいた。
 逃げようとする円香をグッとベッドに押しつけ、相宮は目を細める。

「逃がしませんよ、円香」
「っ!」
「私から逃げることは……許されませんから」
「えっと、その」
「そして、もう私は我慢しない」

 円香は声が出なかった。相宮があまりに真剣にそう呟くからだ。
 目を大きく見開き、相宮の言葉に衝撃を受ける。
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