今宵、貴女の指にキスをする。
ハッと我に返ったのは、相宮がオフィスに戻ってきて電気を付けたときだった。
じんわりと目に涙が浮かんできてしまう。
ギュッと目を瞑ると、円香の目から一粒涙が落ちた。
「円香。ねぇ、本当にどうしたの? 私が何かした?」
円香の身体をギュッと抱きしめ、相宮は心配そうに呟く。
その声を聞いていたら、涙がポロポロと落ち始めてしまった。
この人を失いたくない。誰にも渡したくない。
ドロドロした気持ちで心が苦しい。円香は思いの丈を相宮にぶつけた。
「私の指。もう祐輔さんにとってはどうでもよくなってしまったの?」
「ごめん、円香。言っている意味が全くわからない」
戸惑っている相宮に、円香は怒りをぶちまけた。