今宵、貴女の指にキスをする。
あのころもワイルドな雰囲気な人だと思っていたが、今は年齢を重ねてより色気に磨きがかかっているように思う。
円香は久しぶりの再会に心を躍らせた。
堂上と顔を合わせたのは何年ぶりだろうか。
今の担当者である七原に代わる前、堂上が円香の担当だった。
堂上が昇進するという機会に合わせ、円香の担当も七原に代わったのだ。
デビューしたてで何もわからない円香に、色々なことを堂上は教えてくれた。
小説を書くということは学生時代からしていたが、賞に応募するわけでもなく、ただただ楽しんで書くのみだった。
しかし何を思ったか、『一度ぐらいは公に出してみてもいいかも』と思って参加した作品が見事A出版社が主催する文学賞を受賞してしまったのだから、人生どこでどう転ぶかなんてわからない。
当時OLだった私はただただビックリし、途方に暮れた。
なにせ何もわからなかったのだから仕方がない。