今宵、貴女の指にキスをする。

 どうしたのかと小首を傾げる円香に、堂上はフッと柔らかく笑った。
 その雰囲気はとても色気があり、大人の婀娜っぽさに円香の胸はドキッと大きく高鳴る。

「木佐ちゃん……いや、木佐先生か」
「え?」

 堂上が円香の担当の頃、いつも“木佐ちゃん”とちゃんづけで円香のことを呼んでいた。

 こうして堂上が“先生”と円香を呼んだのは初めてかもしれない。
 どこかこそばゆく感じ、円香は頬を赤らめた。

「出会った頃も可愛いと思っていたが、ますますキレイになったな」
「な……!」

 円香の顔は一気に熱くなり、赤く染まる。まさか、堂上にそんなふうに言われるなんて思ってもいなかった。
 そんな円香の様子を見て、堂上はどこか満足そうにほほ笑む。

 からかわれた、そう感じた円香は視線を逸らして唇を尖らせた。
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