今宵、貴女の指にキスをする。

「……リップサービスをしていただかなくても結構ですが」
「そういう返しをするのか……やっぱり木佐ちゃんは大人になったな」
「そういう堂上さんは、意地悪の仕方がおじさんっぽいですよ」

 悔しくなって言い返した円香に堂上は目を丸くしたあと、ますます笑みを深くする。

「ますますいい女になったな、木佐ちゃん」
「ですから!」

 これ以上はからかわれたくない。
 強い意志で挑もうとする円香の頭に、堂上の大きな手のひらが触れた。

 ゆっくりと撫でる堂上に驚いて、円香はカチンと固まってしまう。こんなふうに男性に頭を撫でられたのは、大人になってから初めてではないだろうか。

 堂上の絡みつく視線に驚いて視線を外すことができない。
 円香は、ただ堂上を見上げた。

「なぁ、木佐ちゃん。担当外れるとき、やっぱり手を出しておけば良かったって、今すっごく後悔してる」
「え?」

 あ然としたままの円香に、堂上は流し目で見つめてくる。
 その視線はとても熱っぽく、円香は視線を逸らすことができない。
 ただ、口を薄く開いてしまう。
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