今宵、貴女の指にキスをする。

 そんな円香の頭を、堂上はまだ撫でている。その手つきはどこか柔らかく優しげで、円香は戸惑いを隠せない。

「俺の手で木佐ちゃんを成長させたい」
「っ!」
「作家としても……そして、女としても」

 これ以上は無理だ。円香はサッと視線を逸らし、堂上から離れるように後ずさる。
 その行動を目を丸くして見つめたあと、堂上はクスクスと笑った。

「久しぶりに会えて良かったよ」
「堂上さん」

 絞り出すように堂上の名前を呼ぶ円香は、ただ彼を見つめるしかできなかった。

 だが、そんな円香に堂上は一歩足を踏み出し、距離を縮める。
 結局、円香が作った距離をあっという間に堂上によって詰められてしまう。

「木佐円香が欲しい」
「っ!」
「そう言ったら……木佐ちゃんは頷いてくれるか?」
「!!」

 顔を真っ赤にして狼狽える円香に、堂上はクツクツと意地悪く笑う。
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