今宵、貴女の指にキスをする。

「本気だから」
「え……?」

 円香が目を丸くして固まっていると、堂上は手を軽く挙げて離れていく。

「おじさんの本気、甘く見ていると痛い目合うぞ? 木佐先生」
「っ!」

 身体をビクッと震わせ目を泳がせる円香に、堂上は妖艶にほほ笑んだ。
 固まり続ける円香を見て口元を緩ませたあと、堂上は人の波へと消えていった。

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