今宵、貴女の指にキスをする。
七原と円香は一斉にドアの方に視線を向けたのだが、そこに立っている人物を見て声を上げた。
「堂上さん?」
「課長!?」
二人同時に驚く顔を見ることができて満足したのだろう。
堂上は楽しそうに笑いながら会議室に入ってきた。そして、何事もなかったように円香の隣に座る。
突然の出来事でビックリしていた円香だったが、至近距離に堂上が近づいて来たことに気づき驚いて身体を硬直させる。
油断していた。それが円香の正直な気持ちだ。
パーティーのあとからずっと円香の頭を悩ませてきたのは、堂上の真意が見えない行動や言動のせいだ。
だけど、それはリップサービスもしくはからかっただけだと判断した円香は、忘れることに専念していた。
なのに、どうして堂上がこうして自分の隣に座っているのだろう。
円香は動揺している自分に叱咤し、なんとか気持ちを落ち着かることに集中する。
すると、七原が怪訝な顔をして堂上を見つめた。