今宵、貴女の指にキスをする。
「とにかく、です。今、連載企画について木佐先生に相談しようと思っていたところなんです。課長は出て行ってください」
「お!? 七原。お前も言うようになったな。よしよし、部下がしっかりと育ってくれて俺は上司として嬉しいぞ」
「はいはい」
七原はとにかく冷たかった。いつもの七原の様子とは百八十度も違う態度に、円香は驚きが隠せない。
ピリピリとしている七原を見て、堂上は大きくため息をついたあと、円香を振り返った。
「どう思う? 木佐ちゃん。俺、七原の上司なのにさ」
「は、はぁ……」
円香自身も七原の豹変に驚いているのだ。そんなふうに聞かれても困ってしまう。
曖昧に笑う円香に、堂上は椅子を動かしてより距離を縮めてきた。
かなり近くなった距離に驚いて身体を反らそうとしたのだが、一足先に堂上が行動してきた。
グッとより近づいた距離に円香は驚きを隠せない。
円香の視線の端では七原が声にならない叫び声を上げているが、それでも堂上はモノともしていない。