今宵、貴女の指にキスをする。

「今度、二人で食事でも」

 そう言いかけた堂上の声を、七原が大声を出してかき消した。

「課長! そろそろ会議が始まるんじゃないんですか?」

 必死に円香から堂上を離そうとする七原に、堂上は苦笑して目尻を下げる。

「確かにタイムリミットだ。残念」

 そう言いつつも堂上は円香の傍を離れようとしない。
 円香は慌てて後ずさってそそくさと七原の近くへと行くと、そこでやっと堂上は諦めて肩を竦めた。

「あーあ、七原が邪魔をするから。木佐ちゃんを口説けなかったじゃないか」
「うるさいですよ! 木佐先生の担当は私、七原です。課長はすっこんでいてください! それにちゃん付けで呼ぶなんて失礼です。木佐先生とお呼びください!」

 スゴイ剣幕で怒鳴りつける七原に、堂上は深くため息をついた。
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