今宵、貴女の指にキスをする。
「なぁ、木佐ちゃん。七原が新入社員で入ってきたとき、素直で可愛かったのにねぇ。数年でこんなに強くなっちまうものかねぇ」
「うるさいですよ。諸先輩たちを真似ただけです。諸先輩たちを!」
そう言ってあたかも悪いのは堂上だと言わんばかりの剣幕に、堂上は両手を軽く挙げた。
「はいはい、降参ですよ。そろそろ会議に行くわ」
「とっとと出て行ってください。木佐先生との打ち合わせの邪魔です!」
七原は何かまだ言いたげな堂上の背中を無理矢理押し、ドアを開けて外に追い出した。
そして問答無用といった様子で、バンッと音を立てて勢いよくドアを閉める。
さすがにそこまでされたら堂上でも入ってくることはできないだろう。
そのまま足音が遠ざかっていき、会議室は円香と七原二人だけになる。
シンと静まりかえる会議室は、異様な雰囲気に包まれていた。
黙り込んでいた二人だったが、七原が「木佐先生、すみませんでした」と深く頭を下げたことにより、円香はハッと我に返った。