今宵、貴女の指にキスをする。
「ええ。ぜひ、案内させてください。きっと貴女の作品に生かされることでしょう」
「っ!」
ふと、相宮が円香の手に触れた。スッーと指の腹で甲を撫でられ、円香はビクリと身体を震わせた。
恐怖ではない。だからこそ、尚更戸惑ってしまう。
手を引っ込めてしまいたいのに、相宮の強い視線に捕らわれてできない。
息をするのを忘れてしまいそうなほど相宮に見つめられ、円香の頬は知らぬうちに熱く赤くなってしまう。
「言ったでしょう? 私は木佐先生をリスペクトしていると」
「そ、そんなの……」
視線を逸らそうとする円香に、それは許さないといった雰囲気で相宮はますます情熱的に見つめてくる。
捕らわれる。まさにそんな感じだ。
円香はドクンと胸を大きく高鳴らせた。
「まだ信じてもらえていないようですね」
「え?」
「どうしたら私の言葉を信じてもらえるようになるのでしょうか」
「っ!」
そんなことを言われても困る。
円香は心の内で盛大に叫んだが、それが相宮に伝わることはない。