今宵、貴女の指にキスをする。

 きっと相宮から見れば、円香はポーカーフェイスだと思っているに違いないのだ。
 どうしようかと戸惑っていると、インターフォンのチャイムが鳴り響いた。
 どうやら来客がやってきたようだ。

 助かった、と内心ホッと胸を撫で下ろした円香は、さりげなく相宮から離れた。

 まだ手に相宮のぬくもりを感じる。
 そのぬくもりを感じるたびに、円香の胸は否応なしにドキドキしてしまう。

 相宮に声をかけてからソッと席を立ち、玄関に向かう。
 鍵を開けて扉を開いた瞬間、来客が誰なのか確認しなかったことに気が付く。

 だが、すでに遅い。そして、円香は来客が誰なのか確認しなかったことに後悔した。

「よ! 木佐ちゃん」
「堂上さん!?」

 まさか、まさかの堂上である。
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