今宵、貴女の指にキスをする。

「木佐ちゃんは、楠先生の大ファンだったな」
「はい! もしかして続編が出るのですか?」

 ずっと待ち焦がれていた楠平三の新作だ。
 思わず円香もテンションがアップしてしまう。

 ワクワクした様子の円香に、堂上は自分の唇に人差し指を押しつけた。

「内緒だ」
「え!?」

 眉を顰める円香に、堂上はニヤリと意地悪に笑う。

「木佐ちゃんが俺に口説かれてくれたら、楠先生に会わせてやるよ」
「け、結構です!」
「おい、少しは考えろよ」

 クツクツ笑いながら堂上は、再び円香の頭を撫でようと手を伸ばしてきた。
 それを避けようとした円香だったが、横から伸びてきた手が堂上の手を払いのける。

 もちろん、堂上の手を払いのけたのは相宮の手だった。
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