今宵、貴女の指にキスをする。
「木佐先生」
「は、はい!」
飛び上がるように返事をする円香に、相宮は真剣な面持ちで言う。
「確認します。堂上さんは今、木佐先生の担当ではないですよね? 私は七原さんだと記憶しておりますが」
腰を折り、円香の顔を覗き込む相宮の目はとにかくまっすぐだ。
円香は慌てて何度も頷く。
「デビュー当時は堂上さんでしたが、今は七原さんです。間違いないです」
「そうですよね。私もそう記憶しています」
ジッと鋭い視線で円香を見つめる相宮は、ジリジリと距離を縮めてくる。
円香もゆっくりと後ずさりをしたが、すぐに行き止まりになる。壁が円香の逃げ道を塞いだのだ。
「あの男は危ない。とにかく気をつけなさい。極力会わない方がいい」
「会わない方がいいと言われましても……」