今宵、貴女の指にキスをする。

「木佐ちゃん。七原から連絡が来ていないか?」
「え?」

 慌ててスマホを取り出すと、そこには七原からの着信が何件も連なっていた。
 マナーモードを解除するのをすっかり忘れていたようだ。

 円香は急いで七原に電話をする。すると、ガラガラ声が聞こえてきた。

「七原さん? どうしたの? そのガラガラ声」
『すみません、木佐先生。実は風邪を引いてしまって……目眩もひどくて立ち上がれなくて』
「え? 大丈夫? 私、今からそちらに向かおうか?」
『いえ、大丈夫です。私、実家住まいなので』

 それを聞いて円香はホッと胸をなで下ろす。
 七原の家族が彼女を看病してくれているのなら大丈夫だろう。

 安堵している円香に、七原は申し訳なさそうに話しかける。
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