今宵、貴女の指にキスをする。
「ほら、眉間の皺」
「あ!」
「こういうところも変わらない」
「あんまり変わらないって言わないでください。成長していないみたいですから……」
多少は成長していてほしいと願っている円香としては、何度も「昔から変わっていない」という堂上の言葉は複雑すぎるのだ。
ムッと眉をより顰める円香の頭を、堂上はポンポンと優しく触れる。
「律儀なところも、不服なときに浮かべる眉間の皺も変わってない。そういうのってこちらとしては安心するんだぞ?」
「そう……ですか?」
「ああ。デビュー当時と思えば、知名度だって上がったし、なによりコンスタンスに仕事が来るようになった。十分小説家として歩いている。しっかりとした小説家先生になった訳だけど、根本的なところが変わっていないっていうのは……昔を知っている俺からしたらホッとするな」
数年前を懐かしむように目を細めていた堂上だったが、ふと表情を意地悪なものにする。