今宵、貴女の指にキスをする。

「さっき言っただろう? 木佐ちゃん」
「え?」
「部下たちにはできない、特別仕様の取材旅行にしてやるって」
「は、はぁ……」

 確かに堂上は言ったが、それと何か関連があるのだろうか。
 堂上の顔を円香が見つめると、フフンと鼻を鳴らす。

「まぁ、それは最後のお楽しみ」
「……気になります」
「おお、おお! 大いに楽しみにしておいてくれ」

 自信満々な様子だ。気になって堂上に何度も聞いてみたが、はぐらかされてしまい教えてもらえない。
 一体、何を企画してくれているのだろうか。

 そんなこんなをしている間に、駅からタクシーで数十分の距離にある○○堂に到着した。
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