今宵、貴女の指にキスをする。
「なに? 木佐ちゃん。俺のこと褒めてくれるんだ」
「……褒めるというか。上手だなぁって」
堂上の食いつきぶりに、円香はたじろぐ。
それにますます調子に乗った堂上は円香の耳元で囁く。
「ご褒美ちょうだい、木佐ちゃん」
「っ!」
妖しい雰囲気に円香は飛び退いた。それを残念そうに堂上は顔を顰める。
「木佐ちゃん、仕事の報酬は弾んでくれなくちゃ。次の仕事に繋がらなくなるぜ?」
「べ、べ、別にいいです。私の担当は七原さんですし」
彼女に言えば、問答無用で堂上を叩き潰してくれるだろう。
強力な助っ人を盾にすると、堂上はますます顔を顰めた。
「七原を盾に出すとは。木佐ちゃんも言うようになったなぁ」
「相手にもよりますからね。堂上さん、変なことばっかり言っていないで仕事してください」
円香が少しきつめな口調で窘めると、さすがの堂上も肩を竦める。
そして、再びシャッターを切り出した。それを見届けたあと、円香は竹林から見える青空を見上げる。