今宵、貴女の指にキスをする。
堂上と二人きりでご飯。それも取材とは違う、プライベートなこと。
今日一日、ここまでは仕事ということで、堂上も編集者として円香に同伴してくれていた。
だが、ここからはプライベートと考えてもいいのだろう。
まだ取材旅行中だと言われればそうなのかもしれないが、円香としてはこのまま新幹線に乗ってしまいたい。
それとなく堂上に言ってみようか。でも、堂上から逃げていると思われるのも失礼に当たるかもしれない。
あれこれ思案に暮れていると、堂上が意味ありげに眉を上げる
。
「ここからは特別取材だな」
「は?」
目を丸くする円香に、堂上は不思議そうに眉を顰める。
「あれ? 木佐ちゃん。俺は今朝言ったはずだろ?」
何を言われただろうか。ふと考え込む円香に、堂上は苦笑いを浮かべる。