今宵、貴女の指にキスをする。

「特別仕様の取材にしてやるって言っただろう?」
「あ……」

 確かにそんなことを言っていた気がする。
 ただ、円香としては堂上が突然現れただけでもビックリして尻込みしていたのに、新幹線に無理矢理連れ込まれたために気が動転していた。

 すっかりそのことを忘れていた円香の背をぐいぐいと堂上は押していく。

「さぁ、取材旅行の締めくくりとして良いところに連れて行ってやる」
「……えっと、そのぉ。それって着いていって大丈夫なんでしょうか?」
「あのなぁ、木佐ちゃん。そんなに警戒されるとこちらとしても傷つくんだけど」
「す、スミマセン!」

 慌てて頭を下げる円香だが、心の中では仕方がないじゃないかと叫んだ。

 あれだけ軽いノリで口説いてくる堂上だ。
 あまり隙を見せない方が得策ではないだろうか。
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