今宵、貴女の指にキスをする。

「俺はだ~れだ」
「……堂上さんですけど」

 怪訝な表情を浮かべる円香に、堂上はフフンと鼻を鳴らす。

「そう、結構大物作家の担当をしている堂上ですな」

 言わずもがなである。
 円香が小さく頷くと、「では、問題です」と堂上は得意げに言う。

「俺が受け持っている作家さんで、京都に自宅を構えているのは一体誰でしょう?」
「作家さんで、京都……?」

 待たせていたタクシーに乗り込み、堂上からの質問に思いを巡らせる。

 堂上が担当している作家さん、すべてを把握している訳ではない。
 それに京都在住の作家さんとなれば、ますます分からなくなる。

 腕を組み、唸り声を出して考え込んでいる円香に、堂上は最大のヒントをくれた。
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