今宵、貴女の指にキスをする。

「まぁ、だからこそ口説くのにやりがいも感じるけどな」
「……堂上さん」

 やっぱりこの人は冗談なのか、本気なのか。見極めがしづらい。
 円香は、小さくため息をついたのだった。

 そうこうしている間に、タクシーは予定していた場所に着いたようだ。
 京都駅近隣のホテルは、最近出来たばかりだということでとてもキレイでおしゃれな雰囲気だ。

「さぁて着いたぞ。先生と待ち合わせしているから、そこで食事にしよう」
「はい」

 円香はドキドキしながら堂上の後に付いていく。
 すると、ロビーのソファーに楠らしき男性が座っているのが見える。

 円香はすっかり楠ファンの一人として浮き足だった。 
< 78 / 157 >

この作品をシェア

pagetop