今宵、貴女の指にキスをする。
だが、相宮は目を少し見開いたあと、その涼しげな目を細めた。
ドキッとするほどの色気があり、円香は視線を逸らす。
だが、次の瞬間。再び相宮を見つめることになってしまった。
「相宮……っさん」
円香の指に、相宮の男性らしい指が触れる。大事なモノに触れるような動きに、円香の胸はドキドキした。
ゆっくりと円香の指に触れる相宮の指。
その動きを見るのが恥ずかしくて目を逸らした円香だったが、指先から彼の熱を感じてしまい意識してしまう。そして、ますます円香の心は翻弄されていく。
ドキドキしすぎて、円香は涙目になってしまった。そのことを指摘せず、相宮は涼しい顔で口を開く。
「先生は先生ですよ。だって、木佐先生は何冊も本をお出しになっているでしょう? それに自分がリスペクトできない作家さんと、私は仕事をしない主義です」
「そ、そんなこと……出版社に言われて無理矢理ってことだって」
声が上擦ってしまう。自分で言っていて悲しくなってしまった。