今宵、貴女の指にキスをする。
堂上を見て不服そうにしている円香に、時計を見せてきた。
「そろそろ予約の時間だ。店に移動してからたっぷりお話させていただけばいいだろう」
その通りだ。がっつきすぎて前のめりな自分に羞恥心を覚える。
カッと一気に頬を真っ赤にさせると、楠がフフッと軽やかにほほ笑む。
「さぁ、木佐先生。お酒でも飲みながらゆっくりお話しましょう」
「は、はい!」
「こうして若く美しい女性とお話できるなんて嬉しいですよ」
「とんでもないです」
手をぶんぶんと顔の前で振る円香に、楠は笑みを深くする。
「謙遜しなくていい。私は本当のことしか言わないから。ねぇ、堂上くん」
「はい。木佐ちゃん、本気にしていいぞ?」
「っ!」
これにどう反応すればいいのだろうか。
真っ赤になって狼狽える円香は、二人が立ち上がったあとに自分も慌てて立ち上がった。