今宵、貴女の指にキスをする。

 そのうち、パタンと扉が閉まる音がした。
 楠はそのまま部屋に入っていったのだろう。

 無理矢理連れ込まれなくて良かった。円香は、足下から崩れ落ちそうになるほどホッとする。
 とにかく早くここから離れたい。円香は足早にエレベーターに乗り込んだのだった。
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