宝石姫と我が儘な教え子
そういえば呆れるほどモテる子である。教室のドアにはお弁当を作って渡そうとする下級生の女の子がいたし、校門の前で彼を待っている他校の生徒も見かけた。時には高校生よりずっと歳上に見える私服の女性も。
彼と一緒にいる女の子の顔触れはいつも違う。そんなことをしていたら普通は女の子に愛想を尽かされると思うけれど、不思議と大丈夫らしい。恋愛に疎い私にはわからない世界だ。
授業で宝石の話を続けていると、しだいに高柳くん以外にも質問に来る子が増えてきた。休み時間にはアクセサリーの選び方を聞かれ、生徒に誘われて何度かお弁当を一緒に食べた。
彼らとの距離が縮まるにつれ、実習期間は矢のように早く過ぎ去っていく。もう残りは数日間。分かってはいたけど早いものだ。
最後の課題の準備ため、美術室で工作用のイミテーションの宝石に色付けをする。優しいミルク色に鮮やかな遊色を浮かべたウォーターオパール。キャンディのようなミントガーネット。桜色のモルガナイト。
生徒が喜びそうなカラーパターンを考えているうちに辺りはもうすっかり暗くなっている。
「あれ…。ちょっと無理し、た…?」