宝石姫と我が儘な教え子


集中してた時は気付かなかったけど、作業に区切りをつけた時には酷い目眩がした。視界が歪んで額に汗が浮かぶ。


「…っ、苦し…、薬飲まなきゃ」


しまった。いつもポケットに入れている緊急時の薬は、今日に限って鞄の中にしまいこんでいる。


「は…、は…っ」


息が苦しい。意識が飛びそうになる。

けれどここで気を失う訳にはいかない。私の場合、悪くすれば永遠の眠りについてしまうのだ。こんな所で死んでは実習に付き合ってくれた生徒に申し訳無さ過ぎる。楽しい高校生活を邪魔するようなことは…


「先生っ…!」


耳鳴りに生徒の声が混じる。大きな足音と振動。


「大丈夫!?どうしたの?保健室行かないと……!」


その子の問いかけに答える余裕はなく、絶え絶えに「鞄をとって」と伝える。私の緩慢な動作で薬と水を欲しがってるのを察してくれたのか、ペットボトルの蓋を外して水を手渡してくれる。


「あり、がと。これで平気だから、もう…」


「どこがだよ!」


怒った声が頭の中に響いた。薬を飲めた安心感で、再び意識が遠退いていく。




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