宝石姫と我が儘な教え子
自分でも何言ってるのかと思う。だけど今度こそ、私は彼に徹底的に嫌われなければならない。
「もし本当に私と付き合いたいなら、もっと他の女と恋愛をして男を磨くことね」
「なんだよ…それ…」
「どうせあなたは高校生の時から誠実なお付き合いなんてしていなかったでしょう?」
良く知りもしないのに、ひどく彼を貶める言い方だ。これでいい。私に想いを残してほしくない。できるならそっと消えていきたい。心がぐちゃぐちゃにすり潰されるように痛んだけど、その痛みは無視した。
「瑠衣先生、
恋人にふさわしくなる努力ならするよ?宝石がほしいとか、医者がいいとか、可愛らしいワガママなら全部叶えてあげる。
でもさ、その願い事は違う。俺が先生を好きな気持ちをまるっきり無視してんじゃん」
「そういうの重いのよ。高柳くんが私の恋人になろうだなんて10年早いわ。あなたなんか、そうね、せいぜいセフレよ」
高柳くんは長いこと呆然として黙っていた。これで確実に終わりになる。目的を遂げた安心感と、それ以上の辛さでぎゅっと目をつぶる。
なのに。
「ぶっ…」
「ななな何がおかしいのよ!」
「うん、ええとね、『セフレ』って例えば何となく体の関係だけ持っちゃってたり、付き合う気はないけど体の相性が良いとか、そういう時に使う名前でしょ。」
「そっ、それが何か?」
「だからヤってもないのにセフレって言われても…
あ、わかった!先生は俺の体目当てってこと?」
「ぶぁっ、馬鹿なこと言わないでっ!」
高柳くんは大きな口をあけて笑ってる。ひとしきり笑った後でこちらに挑戦的な目を向けた。面白がっているようにも、怒りをはらんでいるようにも見える。
「良いよ。セフレになってあげる。ついでに先生の望み通り、遊び慣れた金持ちの医者になってあげるよ。
だからそれまで良い子で待っててね」
「え!?
はぁああああ!?」
なんてことだ。
私の目論みは、木っ端微塵に砕け散った。