宝石姫と我が儘な教え子
それからというもの、たまに二人で会う関係が続いている。待ち合わせのカフェに彼は女の子と仲睦まじげにやって来て、やがてその子と手を振って別れた。
「愛しのセフレさん。これで望み通り?それとも少しは妬いてくれた?」
「自惚れないで」
つっけんどんな態度はあんまり効果がないらしい。まるで子供の癇癪をいなすような微笑みを向けられる。
「そうやって瑠衣に睨まれるのも悪くないね」
私の呼び名は瑠衣先生から瑠衣に変わった。私も名前で呼んで欲しいと言われて、なしくずし的に彼のことを宗次郎くんと呼ぶようになった。
笑顔にはほんの少しの意地悪さが混ざり、それが甘く艶やかなオーラを放っている。
どうして会う度に素敵になってしまうのだろう。今や彼は女の子にとっては危険な獣も同然だ。目を合わせるだけで、まるで親密な内緒話をしてる気持ちにさせるのだ。もっと宗次郎くんのことを知りたいと思う頃には、既に気持ちは彼の手中に落ちている。
一緒にカフェにやって来たあの女の子のように、もし私にも人並みの未来があるのなら……
いや、余計な妄想は止めよう。既に私は願いを叶えた身の上。これ以上の欲を出してはバチが当たる。
それでも誘惑に負けて、一度だけデートらしいことをした。二人で古代の宝石の博覧会を見に行って、作品の解説をすると「授業みたいで懐かしい」と喜んでくれた。
「瑠衣、今日はまだ帰らないで」
帰り道に手をぎゅっと握られて宗次郎くんに引き寄せられる。熱っぽい視線を向けられるだけで息が止まるほど幸せだ。
彼の意図は分かるし、できるなら私もそうしたいと思う。
それでも、季節外れの厚着の下に隠した枯れ木のような手足や、注射の痕だらけの肌を見られるのはどうしても嫌だった。
「そういう気分じゃないの。離して」
手を振り切ろうとして、力を振り絞ったせいで足元が揺らいだ。
とっさに体を支えてくれた宗次郎くんが押し黙る。普段はよく話す彼には珍しいことだ。
「……」
「宗次郎くん?」
「かる…」
「もう離して」
「愛しのセフレさん。これで望み通り?それとも少しは妬いてくれた?」
「自惚れないで」
つっけんどんな態度はあんまり効果がないらしい。まるで子供の癇癪をいなすような微笑みを向けられる。
「そうやって瑠衣に睨まれるのも悪くないね」
私の呼び名は瑠衣先生から瑠衣に変わった。私も名前で呼んで欲しいと言われて、なしくずし的に彼のことを宗次郎くんと呼ぶようになった。
笑顔にはほんの少しの意地悪さが混ざり、それが甘く艶やかなオーラを放っている。
どうして会う度に素敵になってしまうのだろう。今や彼は女の子にとっては危険な獣も同然だ。目を合わせるだけで、まるで親密な内緒話をしてる気持ちにさせるのだ。もっと宗次郎くんのことを知りたいと思う頃には、既に気持ちは彼の手中に落ちている。
一緒にカフェにやって来たあの女の子のように、もし私にも人並みの未来があるのなら……
いや、余計な妄想は止めよう。既に私は願いを叶えた身の上。これ以上の欲を出してはバチが当たる。
それでも誘惑に負けて、一度だけデートらしいことをした。二人で古代の宝石の博覧会を見に行って、作品の解説をすると「授業みたいで懐かしい」と喜んでくれた。
「瑠衣、今日はまだ帰らないで」
帰り道に手をぎゅっと握られて宗次郎くんに引き寄せられる。熱っぽい視線を向けられるだけで息が止まるほど幸せだ。
彼の意図は分かるし、できるなら私もそうしたいと思う。
それでも、季節外れの厚着の下に隠した枯れ木のような手足や、注射の痕だらけの肌を見られるのはどうしても嫌だった。
「そういう気分じゃないの。離して」
手を振り切ろうとして、力を振り絞ったせいで足元が揺らいだ。
とっさに体を支えてくれた宗次郎くんが押し黙る。普段はよく話す彼には珍しいことだ。
「……」
「宗次郎くん?」
「かる…」
「もう離して」