宝石姫と我が儘な教え子
しまった。 以前の私は巫女姫の名に相応しい、威厳ある……というかとんでもなく偉そうな話し方をしていたんだった。

急に変わったら面食らうのも当然かもしれない。


「そんなことはないぞ、気のせいでござろう。く、くるしゅうない」


「姫様、まだ旅の疲れが出ているのですね…」


スフェーンが気遣わしげな顔をする。どうやら「くるしゅうない」は違ったらしい。でも、これまでどうやって話をしていたんだっけ…?



そう、私はすっかり青葉瑠衣になってしまった。


ラピス・フォン・グランディルライトとして生きた記憶も勿論あるけれど、体感時間ではきっちりと異世界での二十二年間が刻まれてる。ついさっきまで庶民だったのだから、同じように振る舞うなんてとても無理。


辺りを見渡すと懐かしいドラマの再放送を見たような気持ちがする。


どこまでも続く白い砂浜とエメラルドグリーンの海。潤沢な果物や木の実。暖かな気候。まるで予約の取れないリゾート地のようなロケーションをしてる。


ただし、島の真ん中に位置する大きなロードライト火山さえなければ…の話だけれど。

ここグランディルライト王国はいつも火山の危険と隣り合わせ。溶岩が流れ出たり、地震が起きたりと被害が続いている。


「ラピス王女、お目覚めの直後に大変申し訳ありませんが、旅に出ておられる間に火之神が荒ぶっておられます。鎮めていただけますでしょうか…」


そばに控えていたシャトヤンシーが口を開く。シャトヤンシーは仙人のような白髪のおじいさんで、本人には言えないけど小柄でモフモフしているので小動物みたいに見える。


「勿論、すぐにやるわ。祟りが出る前に何とかしないとね」
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