宝石姫と我が儘な教え子
ロードライト火山に向かうため、十数名の神官とともに街道を進む。ゆっくりと歩いていくのは、近隣の人々に神事の前に避難してもらうためだ。

儀式のための特別な白い絹のドレスを着て、長い髪を宝玉で飾りたてる。豪華に見えるけれど、身につけている本人は首がびきっとなりそうなほど頭が重い。


「巫女姫様じゃ」


「何とお美しい…」



過剰な誉め言葉に顔がひきつりそうになるけれど、ぐっと我慢した。綺麗に見えるのは衣装と雰囲気の力だ。ここでヘラヘラしたら台無しだろう。


山麓にたどり着くと、スフェーンが飛竜を連れて待っており、彼の手を借り飛竜に乗る。


「神聖なる巫女姫様に、ご加護を」


人々が膝を折って頭を下げ、この国の正式な礼の姿勢で見送られる。祈りを捧げられると、期待に見合うだけの私じゃないのが苦しくなる。まさか、頭を地にすりつけて祈る相手が元病弱で平凡な大学生だなんて思わないだろうな。


スフェーンと二人で空に飛びたち、上空から人々の姿が小さくなるのを見て、やっと肩の力が抜けた。



「あーー、疲れた」


「姫様、まだ何も始まっておりません。これからの神事が肝要なのですが…」


「それは分かってるけど、私にとってはさっきのが第一ラウンドだったんだもん。

でも飛竜の上は最高だね。久し振りに見たけど、この景色はホント気持ちいいな…」


晴れ渡る空と海の青。それからグランディルライトを彩る木々や山々の美しい風景が眼下に広がる。コントラストのはっきりした原色の美しさだ。


「姫様、危ないですから身を乗り出さないでください」


予想どおりの小言にちょっと笑ってしまう。全く、スフェーンは心配性が過ぎる。


「しかし、姫様はいつから飛竜に乗るのがお好きになったのですか?」


「前から好きだったよ。グランディルライトのきれいな景色を空から眺められるし、それに空飛ぶのって楽しくない?」
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