宝石姫と我が儘な教え子
シャトヤンシーの言葉に、思わず「どういうこと?」と身をのり出す。
「姫様は奇跡の巫女の神託を覚えていらっしゃいますか?曰く、石の力を操る姫が火之神を鎮めると。」
「もちろん知ってるわ」
予言の話は物心ついたときから繰り返し聞かされている。見ず知らずのご先祖のお告げによって、どういうわけか私は「奇跡の巫女」と言われているのだ。
‘“石を操る奇跡の巫女に数多の宝玉を捧げよ。巫女は異界に渡りて、ロードライト山の神をとこしえに鎮める力を授かるであろう。”
そのために我が国グランディルライトは貴重な宝玉を百年にわたり蓄えてきたのだと…
「予言の話は何度も聞いてるけど『想定外』が起きなきゃいけない理由はわからないわ。
だいたい何で私みたいな平凡な巫女が異界に渡るんだろうって…」
「姫様が奇跡の巫女と予言されたのは、あなただけが理を覆す力持っているからです。
理に従って何も持ち込まず、持ち帰らず、ただ異界に行くのではどうやって火之神を鎮めるための供物を手に入れるのでしょうか。」
「そうそう、それなの!
旅をする前は異界に行けばなんとかなるのかなって思ってたけど…」
「ふぉふぉ、『行けばなんとかなる』。まさにそのとおりでございます。」
「え?」
「姫様だけが神力の理を越えた何かを起こせるのでございます。そのうち、きっと我々の想像もつかぬ方法で奇跡を起こされましょう」