宝石姫と我が儘な教え子
ちょうどその時、けたたましい音で扉が開いた。薄暗い寝室が朝の光に晒される。


「ご無事ですか!?」


スフェーンが駆け込んできて、宗次郎くんの姿を見るやいなや鬼気迫る表情で寝台に飛び乗る。


「姫様を離せ、この下郎!!」


「え…何?このにーちゃん…?」


スフェーンは寝台の上にいる宗次郎くんを容赦のない力で乱暴に取り押さえる。

一方、宗次郎くんはきょとんとして目をぱちくりさせていた。スフェーンを止めようとしたら宗次郎くんの引き締まった体が視界に入ってしまい慌てて目をそらす。彼は服を着ていないのだ。それに気付いたスフェーンはわなわなと頬をひきつらせている。


「先ほど神力の発動を確認しました。お痛わしい…この狼藉者から身を守られたのですね」


「え?使ってないよ?いいから止めて!その人大丈夫だから!」


スフェーンは青い目を爛々と光らせてまるで制止がきかない。いつも冷静沈着な彼とは思えない様子で宗次郎くんを押さえ付け、シーツごと縛り上げている。


宗次郎くんが「ごふっ」と苦しそうな声を出し、唇の端から血が流れていた。


「止めて!止めなさいスフェーン!」


「痛いな…ここ、夢じゃないのかな…」


宗次郎くんは後ろ手に縛られ、す巻き状態でコテンと倒れた。ぼんやりしてるから、打ち所が悪かったんじゃないかと不安になる。


「大丈夫!?」


「ねえ、瑠衣。これが瑠衣の結婚相手…?

スゲー変な格好してるけど、こいつのせいで瑠衣までコスプレ趣味に?」


今気にすべきはスフェーンの服やら立場じゃなくて身の安全でしょ!と頭を抱えたくなったけれど、事態は待ってくれない。


「言葉の通じぬ未開の民か…お前ような下衆に姫様が手を下す必要もない」


睨み付けるスフェーンに宗次郎くんがニヤリと笑った。縛られてるのを忘れてるのかと思うほど挑発的に口の端をつり上げている。


「瑠衣は渡さないよ」

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