宝石姫と我が儘な教え子

その態度がスフェーンの神経をさらに逆立てたのか、彼は白く光る剣を抜いていた。宗次郎くんの首に剣を近付けるのを見て、もう正気ではいられなくなる。


『かの者を守護せよ!』


ペンダントの宝玉を唇に押し当てると、スフェーンが後ろに吹き飛んだ。大きな音を立てて壁に打ち付けられ、崩れるように壁から落ちる。


「姫様…何故…」


「ごめんスフェーン!気が高ぶるとコントローできなくなるの!

後でちゃんと謝るから、とにかくあの人を攻撃したら駄目!」


ペンダントの宝玉は淡く発光を続けている。まだ少しは力が残っているはず。


『我が国の叡知を、かの者に』


「え、瑠衣…何…?」


戸惑っている宗次郎くんに構わず、額に手を当てこの国の言語をインプットする。スフェーンとの会話が成立しないと彼の命に関わりそうだ。


幸い上手くいったようで、二、三度眉をしかめた宗次郎くんが次に発したのはグランディルライトの言葉だった。



「瑠衣…ここは……もしかして、君は」


「あぁ良かった…。でも何から話したら良いの。ここはグランディルライト。怪我をさせてごめんなさい。誤解があったようだけれどスフェーンに悪気はないの。スフェーンは神官で、彼の服装は宗次郎くんには見慣れないと思う…」


早口で捲し立てたけれど、彼は途中からそれどころではなさそうだった。切羽詰まった表情で腕をつかまれる。


「あれ、縛られてたのにどうやって…?」


「…君は本当に、生きて、いるの?」
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