宝石姫と我が儘な教え子
彼の真剣な表情に気圧されてコクンと頷く。


「ごめんなさい。私は、本当は…」


大きく瞳を揺らした宗次郎くんは私を引き寄せ、でも彼の腕の中に私が収まることはなかった。




「うぐ!??」


いつの間にかスフェーンが宗次郎くんの背後に回り込んで彼を蹴倒し、再び縛り上げている。


「スフェーン止めなさいって!」


「話は聞きました。この者は異界から来た蛮族なのですね」


「全然分かってない。宗次郎くんは賓客よ!話したいこともたくさんあるし、乱暴しないで」


「畏まりました。

貴様、姫様の寛大なお心に感謝するんだな。…まずはその出で立ちを整えろ」


氷のような視線で宗次郎くんを見下ろし、私が意見する余地もなく宗次郎くんを乱暴に引きずっていく。いつも真面目で忠実なスフェーンとは思えない行動である。


ともかく私は一人で取り残され、この事態に無数の疑問符を浮かべた。ひとつだけ確かなことは、


「…本当に、宗次郎くんだった…」


早く彼と話をしたい。会いたい。もう一度ちゃんと会いたい。



けれど宗次郎くんの着替えについていくわけにもいかないし…スフェーンはあんな風だし、不安で待ちきれなくて部屋の中をうろうろと歩き回る。



けれど私が呼ばれた時には、宗次郎くんは想像以上の賓客として大切にもてなされていた。部屋からは楽しげで華やかな笑い声が聞こえてくる。


「ではあなたは呪術師をなさっているの?」


「んー、少し違うかなぁ。医者ってこの辺りにはいないの?それならなおさら、具合が悪いときは呼んでね。診てあげるから」


「でも治癒呪術なんて一般人には高値過ぎます
わ。」


「ふふ、呪術じゃないってば。それに治療費はあなたの笑顔で十分だよ、モルガ。」


「まぁ、ソジェイロ様ったら…」

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