過ぎ去りし王国
医師の話
「先生!急患です!」

看護師の言葉に、仮眠をとっていたジェイコブは飛び起きた。

「また同じ症状です!」

看護師の言葉に、ジェイコブは急患のもとへ急ぎながらもまたかと思う。

この王国では、とある病が今流行している。他の国では治療法があるが、この王国は鎖国のため情報を聞くことはできない。

ゼエゼエ、と荒い呼吸を繰り返して苦しむ患者をジェイコブは必死に助けようとする。

しかし、その多くの命が一瞬にして消えてしまうのだ。

また一人、天国へと旅立った。

ジェイコブはこの街の医師だ。同じく医者のイーサンとともに小さな診療所を開いて働いている。

お喋りなジェイコブとは反対に、イーサンは恐ろしいほど無口だ。いつも治療薬の実験を繰り返している。

「……イーサン、また救えなかったよ」

ジェイコブがそう言っても、イーサンは顔色を変えずひたすら実験をし続けている。

「僕らは、あまりにも無力だね」
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