過ぎ去りし王国
どうすればいいかわからずパニックになるルアンの肩を、「ちょっと見せて！」と誰かが叩いた。

そこには、黒髪黒目の少女がいた。この王国の者ではない。しかし、それを言っている場合ではなかった。

「熱中症ね。日陰に連れて行って」

「熱中症？」

聞いたことのない病気に、ルアンは戸惑う。

「早くして！早くしないとこの人の命が危ない！」

少女の怒鳴り声に、ルアンは慌てて日陰にキランを運ぶ。少女も後を追ってやって来た。他国の人間を国の中に入れてしまった。

少女はキランの服を脱がせ、首や脇の下などを冷やし始める。そして、キランに水を飲ませた。

「あの……ありがとうございます！あなたの名前は？」

手際のいい行動に、ルアンは感激して少女に訊ねる。少女は凛とした声で言った。

「私の名前はフウカ。看護師をしています」

その時、フウカの頰を銃弾がかすった。固まるフウカの頰に血が流れる。

「ルアン、そいつは他国の人間だろう？」

上司が銃を構えてそこに立っている。気がつけば、ルアンたちは銃を持った兵たちに囲まれていた。
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