...music...

「…何してんの?」
ちょっと冷めた目で俺を見る。
茶色のショートヘアがサラサラと風になびく。
そいつはフッとため息をつくと、俺に向かって命令口調で
「ここ、軽音部よね。アタシ入部希望。部長呼んできなさいよ」
って言った。


なんだコイツ!?!?
それが第一印象だった。
俺はしぶしぶ言葉を放った。


「部長は俺だけど。」
「…三年じゃないじゃん。」
「三年、今受験で部活どころじゃないだろ。」
「そう。じゃぁ部長さん、アタシ入部するから。」
「あ!!ちょっ!!!」


ズカズカと部室に入ってギターを手に取る女。
少しの間、見とれているようにギターとにらめっこしている。
「・・・それ、俺のギター。」
「・・・・。」
返事もせずにギターに見とれている。
俺はふとひらめいた。



「なんか弾いてよ」
「弾いていいの?」
「いいよ。それで入部させるか決める。」
「わかった。」


どうせギターなんか弾けないんだろう。そう思った。
だからわざと弾かせて下手だってわからせる。
我ながらいい案だ。


「じゃぁいくよ。」

勢いよく流れるリズム。
俺の求めているロックだった。
歌唱力も抜群。
なんてことだ。これじゃ入部させなくちゃじゃないか。



ジャーン…
軽やかなリズムはやがて終盤を迎える。
スバラシイ
これ以外の言葉は見つからない。

「どうよ。アタシのロック魂。」
上から目線の性格は気に入らないが、それ以外は完璧だ。
「・・・わかった。入部すんだな。」
「そう。ありがとう、部長さん。」
ちくしょう!!
こいつ、ほんとムカつく!!



「じゃぁ、学年と名前。ココに書いて。」
「りょーかい。」
入部希望用紙を渡して俺はギターの練習をはじめる。
嫌がらせのように大きな音をわざとだしながら。


「書けた。」
「ん。」
紙には『草加 音  二年』と書いてあった。
音・・・。性格に反して可愛い名前だ。
「ねぇ部長さん。なんていう名前?」
「・・・奏。」
「プッ!!めっちゃ可愛いんだけど!!」
「う、うるせぇな!!!」
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