狐の嫁入り

小1時間が経ち、雨が止む。

僕が帰路に戻ろうと、
神社を出ようとした時だった。

「チリンチリン、チリンチリン。」
どこからともなく風鈴の音が聞こえてきた。

風は全く吹いていない。

不思議に思い、
音のした方を向いてみると、
長くて黒い、艶やかな髪をなびかせた
僕と同い年位の女の子が立っている。

「長い髪の女の霊」
噂で聞いていたことは本当だった。

しかし僕には恐怖心なんて1ミリもなかった。
それどころか、
幽霊ってこんなにも美しい姿なんだと思いながら、彼女に近寄ろうとしていた。



彼女の方も僕に気付き、
まるで幽霊でも見たかのように、
体を硬直させて僕を見つめ返してきた。

僕は彼女に話しかける決心をし、
第一声を放った。
「あのっ、君はここの巫女さん?」

彼女は、無言のままだ。
相当僕に驚いているのだろう。

僕自身、自分が幽霊なのではないかと疑い始めた。いやしかし、さっき学校へ行ってきた。
自分は生きている、間違いない。

だとすると、彼女は何故驚いているのだろう。

僕は思い切って聞いてみた。




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