拝啓 元カレ上司サマ

優希は煌太に何も尋ねたりしない。

例え煌太が心にモヤモヤを抱えていたとしても、今日という晴れの日に、自分は何を根拠に不安になっているのか。

煌太が記憶のことを優希に話して来ないのは、彼が以前言っていたように、それが大した記憶ではないからだ。

そうに決まっている。

優希は深く考えていたために、家族や友人が花嫁控え室に来てくれたことも忘れていた。

それでも、ウェディングドレス姿の優希を綺麗だと褒めちぎられて、まんざらでもない。

このまま今日を遣り過ごせば、煌太の不安定な心も落ち着いてくるに違いないと結論付けて、世界一幸せな花嫁のふりをした。



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