拝啓 元カレ上司サマ
まさか、今日のもう一人の主役の新郎が、失った記憶を取り戻していただなんて、このチャペルに参列している人達が知る由もない。
煌太がそわそわしているのは、綺麗に着飾った愛しい花嫁を待ちきれないからだと思われているであろう。
実際は、甦った記憶が煌太を押し潰そうとしているのだ。
このまま麗香と話をすることもなく、優希という女性と結婚しても良いのか?
酷なことに、煌太の心は麗香を全く忘れていなかったのだ。
別れて何年経ったって、拒否されたって、愛しいと思えるのはたった一人 麗香だけだ。