拝啓 元カレ上司サマ

「お天気で良かったわね」

満面の笑みで話す麗香の母親は、これまでの麗香の苦しみを思い出していた。

大学から家を出ていた愛娘がこの土地に舞い戻って来た時には、この母も陰で涙していたのだが、こうして晴れ着でめかしこんでいるのを見ると、あの頃の深く傷付いた麗香の姿が目に浮かんで、目頭を押さえた。

そして今日は、その愛娘の見合いの日だ。

母親も気合いを入れて、一張羅を着ている。

「さあ行くわよ」

母親の妙な気合いの入りように、思わず笑ってしまった麗香であった。




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