拝啓 元カレ上司サマ
麗香のような一般人が普段足を踏み入れることのない料亭で、本日の見合いは行われる。
ひとあし先に到着した麗香達は、歴史のある建物の雰囲気に圧倒されていた。
「さすが田上薬品さん御用達の料亭は違うわね。さあお父さん、しゃんとして下さいね」
麗香が幼い頃に父親となったこの男は、彼女の母親であるこの女にめっぽう弱いのだが、分かった分かった、任せておけと言うこの男は、何処からどう見ても立派な麗香の父親である。
麗香が小学校入学時辺りから大学卒業まで、慈しみ育ててくれた人だ。